Jorgeの日記

備忘録と記録です。

薙刀式開始から1ヶ月

前回、薙刀式を始めてから2週間の所感を書いた。

かな配列を知ってからの2週間(薙刀式) - Jorgeの日記

さらにそこから2週間が経過した。現段階での私の結論は「薙刀式はコンセプトが私に合わない」だ。詳しく見ていく。

ある程度打てるようになった

1ヶ月も練習すれば、意外と打てるようになるものである。とりあえずe-typingの腕試しで100を超えた。のんびり文章を打つには困らない程度になり、長文を打つ際のストレスは減ってきた。まだまだ入力に迷いやミスがあるので、このまま練習を重ねればさらに速くなっていくだろう。

一方で、薙刀式の良いところ/不満を感じるところについても理解が深まってきた。さらにいうなら不満を感じるところについては、「不満を感じるのは私の練習不足に起因し、この先練習していけば改善していきそうなところ」「不満ではあったが、工夫次第で解決できたもの」「薙刀式そのものの仕様としての限界であり、どこまでいっても改善しないところ」の3つに分けて捉えている。

それぞれ挙げていく。

1ヶ月現在の所感

よいところ

1モーラ1アクションが徹底されている

これは本当に良い。あらゆるモーラをきちんとワンアクションで出せるということは、文を作っていくうえで一定のテンポが保たれるということである。これはいっそ、快感でさえある。

習得難度が非常に低い

かな配列を始める前に思っていたイメージより、遥かに習得が簡単だった。これはたとえば「し」が濁音キーとの同時押しで「じ」に、「やゆよ」との同時押しで「しゃ」「しゅ」「しょ」になる……と言った形で、徹底的に覚えやすく設計されていることによる。また、「し」と「や」を足したら「しゃ」になるというのは、感覚的にも飲み込みやすい。

さらに薙刀式は、作者が習得のための教本を提供してくれているのである。これに沿って進めていくことで、非常に簡単に習得することができる。

手が疲れない

一度ホームポジションに手をおいたらそこからほとんど動かさずに入力を続けられるので、手にかかる負担が目に見えて違う。打っていて、「手が楽だな」と如実に感じる。

コンセプトがはっきりしている

作者の方が頻繁に情報を発信してくださっているし、設計思想に言及することも多いので、薙刀式が何を考えて、どういう意図で作られたものなのかということが明確。

そのために、今自分が感じている疑問が薙刀式の設計の上でどういった位置づけなのかが判断しやすい。コンセプトに合わないから弾かれたものなのか、自分の練習不足が原因でこの先続けていけば改善されるものなのか、はたまた作者の執筆環境に由来するものなのか。

ショートカットをたくさん登録できる

編集モードを自分勝手にカスタマイズしてもいいし、固有名詞のレイヤーをいじってもいい。すぐに呼び出せるショートカットの場所がたくさん用意されているので、たくさん登録できる。

私の練習不足のポイント

長距離走が遅い

私はTRPGのシナリオを書くので、多少は長文を書く。多い日で日に10000字くらい。その執筆速度が上がりきらない。まだ全然ローマ字のほうが速い。

しかしこれは薙刀式のコンセプトからいって、練習を重ねることで改善していく見込みが強そうである。

文字の表裏がまざる

配列に意識を割いているときはいいが、執筆に集中して無意識で文字を打ってる時、たまにシフト文字と単打がまざる。

「あれ? なんでほしい文字が出ないんだろう……」

と同じキーを押し続け、同じ誤字を打ち続ける場面がたまにある。ただしかし、これは練習をしていけば十分改善できるはずである。

3キーの同時打鍵がもたつく

「ぎょ」など、あまり使わない拗音を入力する時、目に見えてもたつく。ただこれについては、「しょ」などの頻出する拗音についてはもたつかず入力できているので、練度の問題だと考えられる。

ロールオーバーが化ける

化ける。ただこれは入力のクセの問題であり、作者の解説をよむ限り、「ロールオーバー可能な連接」「ロールオーバー出来ない連接」を次第に覚えるために解決するらしい。

解決済みの不満

現行版の仕様として不満だったが、テーブルを自分で好き勝手いじることで改善できたこと。

BとYが遠い

当初使っていたキーボードが普通のロウスタッガードキーボードだったので、ホームポジションにどすんと腰掛けてしまうとBとYが遠く、取りづらかった。作者の方が使っているキーボードがオーソリニアだったはずなので、オーソリニアやカラムスタッガードなら気にならないのだろう。

私はBとTを入れ替えることで対応した。

BSとカーソル移動が単打

日本語入力するときはメチャクチャ便利だった仕様。ただ私が書くのは英数混じり日本語文なので、英語を打ってるときに誤字をすると、消そうとしてUを連打し、謎のUを量産することになる。カーソル移動についても同様。薙刀式に慣れれば慣れるほど、一瞬英字に切り替えたときに謎の誤入力を量産することになる。

単打のカーソル移動とBSを諦めることで対応した。副産物として、日本語の単打で使えるキーが増えた。それによって全体的に打ちやすい内側のキーに配置を移動することができ、小指裏などの打つのが辛い場所の文字を救出することが出来た。

外来音が打ちづらい

私がやるTRPGがファンタジーなので、外来音を多用する。そもそも「ファ」ンタジーの時点で外来音。なので、外来音3キーの仕様に最初苦しめられた。

調べたところ、v14以前では2キーだったらしいので、それを参考に2キーで設定し直した。

編集モードがつかいづらい

作者の方が想定している使用用途が「日本語縦書きの小説執筆用」であり、編集モードはとくにそれに特化した性格になっている。

ここの感覚は全然合わなかったので、一掃して私が必要なものを配置し直した。

おそらく解決しない不満

薙刀式の根本的なコンセプトや基本設計と衝突してるので、解決しない可能性が高い不満

短距離走が遅い

薙刀式は「短距離走の速さは考慮しない」コンセプトの配列である。薙刀式が真価を発揮するのは、一日中執筆を続ける生活を1週間、1ヶ月、1年続けた時。そういうコンセプトで作られている。

私も最初はなるほど! と思って練習を始めたのだが、使っていくうちに気がついた。

私には短距離走の速度が必要になる。

前回も言及したが、私の入力の主な使用用途にテキストセッションがある。1回3時間、週に3回~4回程度の頻度で、テキストチャットをするのだ。ここでの会話の待ち時間は「考えている時間」+「入力している時間」になる。これをいかに縮めていくかということが快適なTRPGライフのために重要になる。

つまり、「1つのセリフを何秒で入力できるか」という時間スケールでの速度が私が一番必要とする入力速度だったのである。これは薙刀式のコンセプトに完全に逆行している。

更にいうなら、前回は書かなかったが、私は日中の作業で、「人の発言をその場でササッとまとめる」「5分以内に自分の意見をテキストにまとめて共有する」のような場面がそこそこあるのだ。こちらでは分スケールでの入力速度が求められる。

これがどうにも致命的だった。長距離走(なんなら超長距離走)に特化している薙刀式は短距離走に向かない。当然である。

短い英語の入力の度にIMEをON/OFFする必要がある。

「たとえばAはいかがでしょうか。あるいはBという選択肢もあります」

これを入力する時、ローマ字入力なら「A」はShift+Aで入力する。同時打鍵の考え方に則るなら、1アクションである。

薙刀式では「IME OFF」→A→「IME ON」である。3アクション。

私の入力する文章の都合上、こうしたケースが頻出した。薙刀式の設計が「日本語の長文」に特化したものなので、コンセプトと衝突した結果発生した問題である。

親指でのシフトは「重い」

親指は他の指ほど器用な指ではない。そのため、速度が上がってくればくるほど、親指でシフトする、その一瞬のラグがつらくなってくる。短距離走ならなおさらだ。この先速度を上げていくうえで、最終的な障害になりそうだという未来が見えてきた。基本設計との衝突。

同時打鍵は短距離走に向かない

同時打鍵は打っていて楽しい方式だと思う。実際薙刀式は打っていて楽しい。1モーラ1アクションが徹底されているのであればなおさらだ。日本語の素朴な感覚にもよく合う。

しかし同時打鍵は最終的な入力速度では順次打鍵に劣る。短距離を走るのには向かない。基本設計との衝突。

今後

薙刀式はやめる。

いろいろ意識しながら試しているうちに、私が求めてるものは「英数混じり日本語文の短距離走」における速度であり、薙刀式の「縦書き日本語の長距離走」というコンセプトとは完全に逆行しているものだということがはっきりしたので。

qwertyローマ字に戻るか、順次打鍵系のかな入力に手を出すかは迷ってる。選択肢としてはharmonixなんかの日本語ローマ字入力を前提にした英字配列、みたいなものもあるし。

今後どういった配列を使っていくか、それと私の使っていた薙刀式が最終的にどういうものになったかは別記事で出す予定

それでも最初に触れたのが薙刀式で良かった

最初に触れたのが薙刀式じゃなかったら、習得にもっと時間がかかったかもしれない。明確にコンセプトを発信してくれている薙刀式じゃなかったら、自分の疑問が時間が解決してくれる性質のものなのか判断ができなかっただろう。

いずれにせよ、自分が入力になにを求めているのかということに気づくまでにもっと長い時間がかかったはずである。1ヶ月でここまでこれたのは、最初に選んだのが薙刀式だったからだ。特にコンセプトを明確に発信してくれていることについて、感謝の念が強い。