前回、薙刀式を辞めた。
じゃあこれからどうするの? ということで、理想の論理配列について考えていく。ここでいう理想というのはもちろん、私にとっての理想という意味だ。平たく言えば、次に何を触るのという話だ。
いまのところ、
- 月林檎
- Clandor+AZIKライクな拡張
- Arensito+AZIKライクな拡張+日本語最適化
- とかげ配列
- qwertyに戻る
で考え中。
私が論理配列でしたいこと
私が普段何を打ってる人なのか、何が出来るのかは別の記事に詳しくまとめた。これを踏まえたうえで、私が論理配列に何を求めるのかを考えていく。
私が論理配列に手を出したきっかけは別記事にまとめてある。ここから大きく変化はしていないが、薙刀式を経たことで動機がより具体化されている。私が論理配列を変えるのは
- 1分程度の時間スケールでqwertyローマ字より速く打てる。
ようになりたいからだ。さらに私は論理配列に対して、以下を求める。
- 英数記号混じり日本語文に適している
- 学習コストと慣れの速度が低い
qwertyローマ字より速い
1分の時間スケールなんてqwertyローマ字の一番得意な分野じゃないか! と思われるかもしれないが、私のqwertyローマ字は秒3カナ(未変換)程度。これより速い配列はいくらでもあると思う。
じゃあ具体的にどのくらい早くなりたいの? と言われた場合、秒5カナ程度を目指したい。もちろん練習を重ねてそれ以上になれればそれに越したことはないと思う。しかし一旦、秒5カナを目標にしたい。1.5倍以上の速度になれば流石に変化が体感できるだろうと思うし、変化が体感できないなら学習コストを払う意味がないからだ。
また、アナウンサーの話す速度が300文字/分=5文字/秒なので、それを意識した数字でもある。話す速度で書けるようになれば、また見えてくる世界があるかな、と。
学習コストと慣れの速度が低い
「薙刀式でも秒5カナは達成できる」
事実だ。なにしろ実際にやってる人が言ってるのだから間違いない。だが正直、各論理配列に完璧に習熟した人がどれだけの速度を出せるか、ということは私にとってあまり意味を持たない。私が無尽蔵に学習コストをかけられるわけではないからだ。学習コストを度外視していいならqwertyローマ字に完璧に習熟すれば秒11カナや秒14カナ入力できるようになることは多くのタイパーが証明してくれている。
学習コストを考えたうえでの速度とは、「練習開始から一定の期間で到達可能な入力速度」として考える。更にいうなら、基本となるキー配列を覚えて入力を重ねていけば自然に習熟できる仕組みが配列側に備わっていると、ベストだ。
薙刀式はこの点で優れている。学習コストを考慮した配列になっている。逆にqwertyローマ字は標準となるホームポジションで入力している限り早い段階で速度が頭打ちになり、そこから個々の連接ごとに特殊な運指を要求され始める。ちなみに私はqwertyローマ字はすべて標準の運指で入力していることもあり、速度が頭打ちになっている。
「一定の期間」について私の場合を明言しておこう。3ヶ月~6ヶ月、一旦これを基準にしたい。薙刀式について、1ヶ月で基本的なキー配列を覚え、ある程度無意識に入力ができるところまでいった。そこで辞めてしまったが、練習を重ねていけばしばらくは練習期間に応じて速度は上がっていくはずである。
ただ、どのような配列であれ、標準の運指を淀みなく無意識に入力できるようになった時点で成長曲線がゆるやかになるポイントというものが存在するはずだ。その先は特殊な工夫が必要になったり、日に何時間もの練習を欠かさないことが必要になったりし始めるタイミング。「ただつかってるだけで到達できる限界点」と言い換えてもいい。
そのポイントに達した時点で、目標とする速度に達していることが望ましい。
それを3ヶ月~6ヶ月と設定したことに根拠と言えるほどのものはない。私がこれまでの人生で経験してきたものごとの習得速度と、実際に薙刀式を1ヶ月やってみた感覚を照らし合わせて、このまま続ければそのくらいのタイミングで一度成長が緩やかになるタイミングが訪れるのではないかという、感覚に基づく予想だ。
重視する性質
「3ヶ月~6ヶ月で秒5カナに到達可能で、その後も緩やかに成長をしていくことが見込まれる、英数記号混じり日本語文に適性を持った論理配列」
めちゃくちゃを言ってる自覚はある。ほんまにそんなのあるのか? とはいえ、とりあえずこれが探している配列の姿であることがわかった。ではその配列は具体的にどういった性質を備えているものが望ましいのか、それを考えていく。
英字の一時入力
日本語入力中にShiftを押した際に一時的に英字が入力できる。単語の確定後、自動で日本語入力に戻る。これがほしい。これがあるかどうかで、日本語文中にアルファベットが登場した時の入力のしやすさが段違いだ。単語の確定後、自動で日本語に戻ってくれるというのが重要だ。
MS IMEやAtokには専用の設定があるようだし、私が使っているGoogle日本語入力でも、単語の頭が大文字で良ければ概ね同じことが最初から出来る。ローマ字入力なら、特別な設定の必要なく手に入る機能だ。
……とはいえ、入力モードが日本語だったときに、LShift単打で一時的に英数モードに入り、Enterで日本語入力に戻ればいいだけだから、AHKでプログラムを書けば概ねどの配列でも実装可能な気がする。
Enter、BSは親指領域に
EnterとBSは単打でほしい。ただ、近い内に親指領域のボタンが多いキーボードに乗り換えて、EnterとBSはそこに割り振る予定。
そうなると、4指の側にEnterやBSがあると困る。そうした配列の場合は、EnterやBSの場所に他の文字をいれるなど、何らかの改造が必要になる。
シフトキーは親指以外
親指の入力は「重い」。特に親指と他のキーとの同時押しはテンポの上で引っかかりになってくる感触がある。
あと個人的な好みとして、親指のキー(Space)には様々なショートカットを作って置いておきたいので、文字入力では使いたくない。
順次打鍵
同時打鍵は遅い、らしい。実際、私の感覚としてもこれは頷ける。特にロールオーバーが許容されないような運指が含まれる場合、速度が上がれば上がるほどそこが引っかかりになる。
複数キーを同時に押すために手の形を作って同時に押すより、その2キーを連続して押してしまう方が高速であると思う。
私は薙刀式を使っている中で、今はまだ気になるほどではないが、この先高速化していくにつれて同時打鍵が障害になるという感覚の欠片を感じた。これが親指との同時押しに起因するものなのか、同時押し全般においてそうであるのかまでは切り分けられなかった。しかしどこかでつまずく原因になるだろうなとは思う。
あと同時打鍵系の薙刀式には触れたので、次は順次打鍵の配列に触れて感覚を理解してから先に進みたいという考えもある。
行段左右非分離配列/非交互打鍵
左右分離系、交互打鍵系がよいと長らく言われてきた(らしい)。しかし最近になって、アルペジオを重視する考え方が出てきた(らしい)。
私の感覚としても、同手異指での連続は、むしろ入力のしやすさを感じる。左右分離系・左右交互打鍵について、入力しているうちに左右の入力がそれぞれ1キーずつずれてしまう現象が発生するというのも、「ありそうなことだな」という感じで頷ける。
実際qwertyローマ字でも薙刀式でも、同手異指での近いキーの連続は入力しやすい。こういうのをアルペジオというらしい。
左右分離してしまえば、同指連続は発生しない。これは論理配列の設計が楽になる。Keyboard Layout Analyzerでのスコアリングが左右交互打鍵を高く評価しているために行段左右分離が流行った経緯もあるようだ。
だが薙刀式を練習してわかった。やはりアルペジオは重視されるべきだし、適度に同手異指の連続は発生するようが良い。さらに突き詰めるなら、左右の手の切替のタイミングが単語の意味上の区切りと一致すると完璧だ。
薙刀式なんだよな。薙刀式に近い設計思想で作られた順次打鍵系がほしい、という話になる。
別にローマ字でもいい
同指連続や移動距離などが適切に考慮されているなら、アルファベットの論理配列を用いて、ローマ字を入力する形でもよい。qwertyローマ字が習熟で秒10カナ以上を目指せるなら、適切に配置されたローマ字なら同程度かそれ以上のパフォーマンスを得られるはずだ。それでも目標はクリアできる。
私は実は、ローマ字入力がそこまで嫌いではない。打鍵数が多くて速く打てると、「打ってる感」が強くなり打っていて楽しい。打鍵数が多いということは手からうける刺激が多いということでもある。それが執筆を続けるうえで、適度な脳の刺激になってくれている感覚がある。感覚と感性のレベルの話だが、楽しいほうが良いアイデアも浮かんでくるものである。
もっとも、仮にローマ字入力を行うならAZIKの一部(連続母音や「ん」の1打鍵)などはとりいれたいが……。
3段以内に収まること
私がとっさに入力できるキーはホームポジションとそれに隣接しているキーだけだ。4段以上の配列は私には扱いきれないと考えている。
Azeron Cyborgみたいなデバイスを使って、物理的にホームポジションからアクセスできるキーを増やすのであればその限りではないが。
清濁分離/非分離
どっちでもいい。もちろん非分離は扱いやすいが、分離であってもそれが良い方に作用して3ヶ月~6ヶ月で秒5カナに届くなら、ここでは何の問題もない。目標達成後の成長曲線まで考えるなら、清濁分離で適切な配置がされてるほうがいいのかな?
ショートカットキーの考慮は不要
ローマ字にする場合の話。DvorakJは装飾キーの押し下げ時のみqwertyに戻すことができるので、頻出ショートカットキーの配置をqwertyから継承する必要はない。
具体的な候補
上記の条件で適切な論理配列を探した。すべての条件を満たすものは当然ないが、そのなかで良さそうだと感じたのが以下の3つ
月林檎
月林檎配列(上段中指シフト3段かな配列) - 新かな配列練習道場
月配列(順次配列系のかな配列)の系統。ただしいくつかの点でメインストリームの月とは異なる。
- 後置シフト(月のメインストリームは前置シフト)
- 連接のアルペジオを重視している(月のメインストリームは左右交互打鍵)
気に入った点
アルペジオ! アルペジオ! 私アルペジオ大好き!
月は気になっていたが、左右交互打鍵思想の配列ということで、二の足を踏んでいた。しかし月林檎はなんとアルペジオを考慮して設計されてるのである。薙刀式も参考にしたそう。
これがなければ自分で薙刀式をベースにした順次打鍵でもつくろうかと思ってたので、とても嬉しい。
すべての濁音に2打鍵で届くというのも、よい。
今回の配列選びでは学習コストも大きなポイントにしている。その点これは清濁非分離で、習得難易度が低そうなのも気に入っている。
懸念点
Aの左のキーを使う必要がある。そこにあるのがCAPSLOCKならそれでも一向に構わないが、私はそこにCtlをおいてるので、ちょっと困る。
とはいえ単打で「き」、同時打鍵でctlになるように調整すれば特に問題なく使えそうかな? 今のところCtl単打には何も振ってないので、それでもいいかも。
ちょっとまだよくわかってないけど、これ「りょ」を入力する時、「と」→「シフト」→「ょ」で、シフトと「ょ」が同じキーにあるから同鍵連続が発生する? キーボードをがちゃがちゃいじってる限り「入力」は頻出単語だから、これが打ちにくいのはちょっと困るかも。
Clandor
これはローマ字入力。2020年ごろに開発された配列で、3-gramの打鍵の考慮を謳っている。一応は行段左右非分離系でもある。
これを使用する場合、これをベースに連続母音や「ん」の単打などの拡張をしていく形になる。
気に入った点
左右非分離……なのか? aだけ逆手にある。これを左右非分離と言っていいかはわからないが、まあ一応分離はしてる。よい。
3-gramを考慮している、らしい。これが本当ならすごいことだ。
懸念点
まともな運用情報がない。
一次ソースが作者のツイッターの画像しかない。
設計思想が発信されていないので、何を重視した配列なのかわからない。評価材料がないので、良いとも悪いとも言えない。
Arensito
英語最適化の配列。
気に入った点
左右非分離で、アルペジオを考慮している。英文入力の配列としてはかなり良い設計をされている。
懸念点
ここでいうアルペジオは英語のアルペジオなので、日本語で使用するには大規模な改修が必要になる。
あといくつかの記事から辿れる大本のページらしきものにアクセスできない。
とかげ配列
「とかげ配列」公開! - 新かな配列練習道場 最強の配列ができた - 新かな配列練習道場
左右非分離を掲げたローマ字配列。
気に入った点
左右非分離で、連接を考慮してる。また、「ん」専用のキーが導入されている。十分に練られている配列という印象があるので、大きな改造の必要なく使い始められそう。
懸念点
既に完成度が高く、連続母音などの拡張を盛り込む余白がないかも。
qwertyローマ字
言わずとしれたデファクトスタンダード。
気に入った点
なんだかんだいって実はこいつは左右非分離。
あと現状で私が使える配列の中で一番速い。ずっと使ってきたリードの分、「3ヶ月~6ヶ月」という期限に対して有利。
先駆者が山程おり、練習方法やノウハウが蓄積されている。
端末を選ばないので、自宅以外のキーボードでも使用できる。
懸念点
肝心の配列としては左右に分離してないだけで何も考えられてないと思う。分離してなくてもアルペジオが考慮されてなかったら何の意味もなくない?
まとめ
考え中。今のところ月林檎が最有力候補。
以下補足